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新しいことをすると失敗してしまう理由

次に異質化による失敗について考えてきましょう。以前、ファーストリテイリング社は野菜の通販ビジネスを手がけました。しかしアパレルのようなSPAと同様に川上から川下までを垂直統合しなければ、意図している価値提供が難しいことがわかりました。そこで川上までとなると、自社で農業をやるか、農家をコントロールできなければなりません。しかし日本の農業はほとんどが個人事業であり、このコントロールが困難だったのです。しかもアパレルと異なって野菜は生鮮食品ですから計画生産したり、在庫保管ということができません。お手頃価格での提供ができずに一年半で撤退したのです。自社がこれまでの事業とは異なること、他社が手掛けていないことを手掛けることの失敗例です。新しいことは、経験もなく、慣れてもおらず、不得意なことですから失敗の確率は非常に高くなります。

もう一つ、イギリスとフランスが共同開発した超音速旅客機のコンコルド、もう既に消えてしまいましたが、当時は相当鳴り物入りで登場しました。コンコルドは通常の旅客機の二倍の速度で運行できます。飛行速度を最優先させるために、機内空間は狭く、騒音がひどく、通常よりも長い滑走路を必要とし、運賃が非常に高額でした。

時間短縮にそこまでの価値を感じる顧客がわずかだったというのも誤算だったのでしょう。競合は、時間以外の価値を提供しました。例えばボーイングは乗客数を最大化して、一人当たりのコストを劇的に下げて価格を訴求しました。各航空会社は長い飛行時間という弱みをカバーするために、長い飛行時間を快適に過ごすことができるように様々な工夫を行いました。ゆったりした座席、横になれるフラット対応の座席、美味しい食事、飛行中の映画鑑賞、飛行中も仕事ができる環境等を提供したのです。機内が狭いコンコルドではこのような対応ができません。

コンコルドは結局1976年に生産中止され、2003年には全機の運行が停止しました。当然投資回収もできずに終わってしまいました。しかし開発当初でこのような結果を予想するのは困難です。客席が窮屈でも忙しいビジネス・エグゼクティブは時間の速さを優先させるという考え方は、間違ってはいないと思います。新しいことをやる以上は、どれほど事前調査を行ったとしても、その結果は予測できるわけはありません。結局のところやってみないと分からないことが多いのです。

そのため、同質化競争に陥って限りなく利益がゼロになるか、異質化を試みて不慣れなことにチャレンジして失敗するのか、ビジネスは根本的にどちらかしかない、といえるのです。ああ、なんていう矛盾なんでしょうか!

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