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海外の繰越欠損金

株式買収を行って子会社化するときに、論点の一つになるのが繰越欠損金が将来にわたり使えるかどうかです。株式買収を行って、買収対象会社の繰越欠損金をそのまま使用できれば、同社に十分な課税所得が見込める限り、その繰越欠損金は節税効果をもたらします。

 

繰越欠損金の繰越可能期間は国によって異なります。そこで節税効果をどう見積もるかは、買収対象会社の所在地国における欠損金の使用期限に注意しましょう。仮に買収時点で繰越欠損金の使用期限が迫り、使用しきれない場合には、資産買収で資産の含み益を実現させ、繰越欠損金を用いる方が税務メリットがある場合もあります。

 

ここで具体的な国で繰越欠損金について見ていきましょう。

  • シンガポール

シンガポールでは無期限で欠損金を繰り越すことが可能ですが、50%超の株主変動があると、繰越欠損金が消滅します。ここで株主テストを行う必要があります。以下の2つの時点での株主変更の有無を確認します。

  • 損失が発生した事業年度の決算日が属する暦年の12月31日
  • 損失を控除する賦課年度(決算日が属する暦年の翌年)の1月1日

但し、上記株主テストの結果、株主変更があった(発行済株式の50%以上が同一の株主によって保有されていない)と判定されても、シンガポールの税務当局に対して、株主変更が税務目的ではないことを示すことができれば、株主テストの免除を申請し、繰越欠損金が消滅しないケースもあります。

 

  • インド

インドでは欠損金を8年間繰り越すことができますが、非公開会社では49%超の株主変動があると繰越欠損金が消滅します。具体的には以下の2つの時点での株主変更の有無を確認することになります

  • 損失が発生した年度の最終日
  • 損失を控除する年度の最終日

 

国によっては、未控除の減価償却費の繰り越しが株主変更や事業内容の変更による影響を受けることがあります。例えばシンガポールでは、未控除の減価償却費の繰り越しにあたって、株主テストの充足の他、これを実際に控除する事業年度において、同一の事業を営んでいることが必要です。

 

また、優遇税制の適用を受けている場合、買収によって株主が変更になることで失効する可能性があります。概ね株主変更手続き等の適正な手続きを踏めば優遇税制の適用を継続できる場合が多いと思われますので、各国の投資委員会等に確認するようにしましょう。

 

買主の立場から株式買収が資産買収に比べて有利になる場合は次のような場面です。

  • 税務上暖簾の償却が認められていない場合
  • 買収対象会社が多額の繰越欠損金を有し、買収しても失効しない場合
  • 租税債務や税務リスクが概ね切り離せると認められる場合

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