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連載第1回「メンバーシップ・ビジネスが生まれた時代背景」

定期的に「メンバーシップ・ビジネス概論」について語っていく。今回は第1回目として掲題の通り、メンバーシップ・ビジネスが生まれた時代背景について、論じる。

 

「誰も一人では生きられない~♬」というある映画の主題歌の一節があるが、人間社会そのものを表していると言えるのではないか。そもそも今日食事ができるのは、農家の方が汗水を垂らして農作物を育てているからであり、卸売業の方、配送業の方、そして小売店の方がいらっしゃってこそだ。もう一つ、一人でいると寂しい。だから、人は何かの組織に属したがる。そこで心理学者マズローの5段階欲求説を思い出そう。3番目が社会的欲求、これが家族・集団を作り、どこかに所属しているという満足感を得たい、そして4番目が承認欲求、自分が集団から存在価値を認めてもらい尊重されたい、であった。どこかの組織や集団に属して安心感を得るだけであれば、社会的欲求が満たされ、自分の投稿がシェアされたりすると、承認欲求が満たされる。さらにその集団の中心人物になることで喜びを感じられれば、最上位の欲求と言われる、自己実現欲求が満たされることになる。

 

人は同じような境遇を持った人に親近感を得るし、そんな大それたものではなくて、同じ趣味を持っている人に対しても親近感を持つ。

 

経済という大きな話をしておくと、既存の経済では「所有」が人を満足させるものであった。マイカーを持つ、マイホームを持つ、例えば結婚についても、婚姻届を出して、お互いに夫婦であるという権利を持つことが当たり前だった。今はどうだろう。車はレンタルでOK、マイホームもいらないよ、賃貸で充分。有名人でホテル暮らしの方もおられる。結婚も事実婚で充分(最近、結婚できなくて十分という考え方もあるだろうが、むしろ経済状況のために結婚できないという方が正しいか)。所有ではなくて、体験を共有できれば十分という考え方である。

 

でも車は使うときには必要だし、雨風しのぐのに家は必要、婚姻届は出さなくても誰かと暮らしたいな、という欲求はある。むしろ自分の都合のいいときに、都合のいい相手がいてくれればいいというのが本音かもしれない。そのうち人型アンドロイドでも十分になってしまうかもしれない。

 

「一期一会」という言葉があるが、その意味は、一度しかないこの機会に会った相手を誠心誠意互いに尽くすという考え方であり、一度きりだからどうでもいいというわけではない。本来ならば、ビジネスにおいても一度きりの関係でいいということはあり得ない。その後企業とお客様の間で何らかの関係を築くのが本来のビジネスの在り方であると思う。

 

その点で、1回ごとの取引を基盤としたモデルというものは長続きしない。それは所有(オーナーシップ)の時代であれば、モノやサービスによってはあり得たことだ。住宅の営業マンの中にはマイホームも売ってしまえばこちらのもの(なんて営業マンも中にはいるだろう)。もちろんサポートが良ければ、もう一度建て替えのときに、ともなるが、その頃は世代も異なっているから、お客様にならない場合が多いし、営業マンにとってもその頃は自分には関係はない。FXや証券投資みたいなものは、損をしたらお客が離れていき、「ご利用ありがとうございました」の一言で終わり。まさに一回こっきり。信託の場合はお客様が大損しなければ(そもそもハイリスク投資でなければそんなに大きな損はないはず)長いかもしれないが、営業の考えることは、この顧客からもっと資産を出させてもっと運用させよう。手数料がもらえればいいや、だろう。一方が得をして、他方が損をするようなゼロサムのようなビジネスは長続きしない。株にはリスクがつきものとは、経済学的には理屈に合っているが、所詮、それを提供する会社の逃げ口上にしか聞こえない。それをよりどころに成り立っているビジネスモデルでしかないということだ。

 

つまり、サービスを提供するものと受けるものがお互いに利益の出るビジネスでなければ、長続きはしないのだ。一度きりでなく、長続きを前提とする場合には、「お互いに利益の出る」こと、そして所有(オーナーシップ)から、会員(メンバーシップ)への変化ということも言える。その組織がいいと思わなければ会員にはならない。

 

「店」で考えてみよう。一度きりというのは、「クーポン」で呼び寄せた顧客。彼らは安いから来店するわけで、その次に利用することはかなり少ない。だからそもそも客の集め方が異なる。あなたの店に関心を持ってくれる客に最初からアプローチしなければ、リピーターになるということはない。一度きりビジネスなんて言うのは、もはや時代遅れだ。少なくともソーシャル時代のビジネスとしてはふさわしいものではない。

 

これからのビジネスは、メンバーシップを育てて、そのメンバーシップに対して、自社商品をアピールするという方向に変わっていくだろう。そのアピールを顧客が他の顧客に対して行ってくれればなおよい。新規顧客には、このメンバーシップがどんなに属すことに魅力的かを伝えていく。こういった考え方を「メンバーシップ・マーケティング」という。そして魅力的なメンバーシップに育てていくことを「メンバーシップ・マネジメント」という。何回かに分けて、これらを説明していきたい。

 

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