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待たせることもマーケティング戦略の一つ

速さはビジネスのウリになります。同じサービスを早くやることがビジネスの技術というならば、お客を待たせることはビジネスの魔法といえるのでないでしょうか。そもそもお客を待たせることが絶対的なマイナスといえるのでしょうか。

 

サービスは早ければいいというものではありません。だからといいつつ、のんびりがいいわけでもありません。サービスにはきっと適切な時間というものがあるのです。しかしながら、待たせるものにはなんと魅力があることか。

 

例えばAppleのiPhone等は待たせることが常套手段です。急がないことをブランド化しています。しかも製品がリリースするまで、いかにお客をじれったくさせるのか。そして発売当日も必ずできる行列。買うまでに相当時間がかかります。

 

お客が殺到し、製造台数に限りがある、というならば、そのときに増産体制を作れば、あんな大企業、いくらでもできるでしょう。そう、あれは一種のマーケティング戦略に他なりません。人は待たされると欲しくなります。その欲しい気持ちに一気に火をつけられるのです。

 

行列のできるラーメン屋も、美味しいから行列ができるのですが、あの行列が調味料になっていませんか?空腹が調味料というならば、間違いなくあの行列も調味料です。まあ、待たされて丁度いいようにおなかがすくのかもしれませんけれども。でもラーメン屋さんは、一生懸命大量のお客さまを汗だくになりながらも、こなしていきます。つまり行列ができるラーメン屋さんは、待たせることを別にマーケティング戦略としては大々的にとらえていないように思えます。少しは考えているかもしれませんが。

 

それに引き換え、ロンドンの高級住宅街にある「Grenger & Co.」なんて店は、絶対にスタッフが焦っておらず、大量にさばこうという気持ちを感じません。それが悪いわけではないのです。それはマーケティング戦略なのですから。朝になると行列ができますが、大量のお客さまが流れていようと、店の中の時間はゆっくりと過ぎていきます。店の中と外とでは明らかに時間の流れが異なります。お客さまは早く食べてテーブルを開けてくれというプレッシャーを全く感じません。そのあとのお客がどれだけ並んでいようと、一度テーブルに着いたお客さまは、自分の時間を大切に過ごします。ゆっくりとメニューを選び、そしてゆっくりと食事を楽しめるのです。

 

もしこの店で、スタッフやシェフが忙しそうにしていたとしたら、お客さまものんびりとは食事していられず、繁盛店にはならなかったでしょう。このレストランにくるお客さまは、きちんとしたサービスには時間がかかることを納得している方しか来られません。人を待たせる行為には、その商品やサービスにはそれだけ待つだけの価値があるというメッセージを持っています。

 

上手くいかないビジネスほど、お客さまを待たせないように、スタッフがせかせかします。土日もなく、残業も多く、ミスも目立ちます。こういうときには「自分は寝てないんだぞ!」とお客さまに言ってはいけませんが、上司には言ってもいいでしょう。お客さまを待たせないことに価値のある企業の仕事の質は落ちているといえます。そして余裕がなくても注文を受け、あわただしくサービスを提供し、目の前の売り上げを少しでも多く上げようとします。こういうビジネスでは短期的には利益を上げられても長続きはしません。

 

もちろんスピードで勝負しなければならないビジネスもあるとは思いますが、待たせてもお客さまに魅力を与えるサービスは何なのかを、考え直してみるきっかけになっていただければ幸いです。

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