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気候や雰囲気が料理の味に影響を与える。五感も含めたサービスを。

バリで飲むビンタンビールは格別だった。ビンタンビールはインドネシアを代表するピルスナータイプのビールのこと。非常にすっきりした味わいである。この味わいをかみしめながら、日本のインドネシア料理店でビンタンビールを飲んでみた。あの感動はどこ行った?

バリ島はインドネシアの一島であり、熱帯に属する。そして平均気温は最低24度から最高31度程度。ずっと暑い、さらに平均湿度が約80%弱。ジメジメして暑いところでビンタンビールを飲むから美味しいのであって、別の気候帯の日本で飲んでもあまり美味しさを感じない。温度や湿度が味にまで影響を与えている。

雰囲気もあるのかもしれない。ちなみに沖縄では必ずオリオンビールを飲むことにしているし、札幌に行ったらサッポロビールを飲む。その他のビールはよほどのことがない限り飲まない。その土地で飲まなくても、どちらも元々美味しいビールだ。札幌市にあるサッポロビール博物館でのテイスティングはぜひともお勧めしたい。ここでのサッポロ開拓使麦酒醸造所の「開拓使麦酒」が若干見た目が濃い目で、コクがあり、レトロな趣がする。あまりビールの話をすると、もっと深みに入り込みそうなのでここでやめておこう。居酒屋の晩酌セットが恋しくなってしまう。

ここでのポイントは、気温や湿度、店の雰囲気が味に確実に影響を与えるということだ。閉鎖空間で気温と湿度をバリに合わせて、日本でもビンタンビールを楽しむことができたら、どれだけ幸福感が満ち溢れてくるかと思う。もっともこのような大きな仕掛けは費用対効果が合うかどうかわからない。そもそもインドネシアのビンタンビールをどれだけ日本人が好きだろうか?日本人は、はるかにキリンやアサヒ、サッポロの方が美味しいと思う人が絶対数だろう。

イギリス人のシェフで、ヘストン・ブルメンタール(Heston Blumenthal)という料理の鬼才がいる。彼のレストランである「ファット・ダック」(ロンドン西部のバークシャーにある)は2004年にミシュランで三ツ星を獲得している。正直、一般庶民が気軽に食べられるほどの値段ではなく、記念日限定となる価格だが、科学的調理法を用いる点で非常に興味深い。また、「多感覚料理」を一つのキーワードにしている。そのうちの一つとして、「聴覚」が「味覚」にどのような影響を与えるか、という挑戦的なメニューを提供した。カキやハマグリ等、海の幸を使った料理を提供するにあたり、テーブルにiPodを添え、そこから波の音を聞いてもらいながら、シーフードを堪能してもらおうという料理である。

流石に自分では試していないが(最近、ロンドンに行く用事もない)、話題性という点でも興味深い。店内を改装する仕掛はコストがかかる。その点、iPodだけであれば、音だけの仕掛で比較的に安く済む。とはいえ、全テーブルにiPodを置くのは、小さな飲食店にとっては、安くない出費ではあるけれども。

とにかくモノではなく、体験を売れ、それは飲食店以外の店にも言えることだ。それが唯一の差別化につながる。

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