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求心力と遠心力を活用した販促、「君の名」はと「逃げ恥」のヒットの秘密とは

求心力と遠心力を上手く活用した例として、一番わかりやすいのが、映画『君の名は。』であろう。

新海監督も元々優秀であり、コアなファン層を持つクリエイターだったが、スタジオジブリのような巨大な固定ファン層を抱えた監督ではなかった。潜在ユーザー数も少なく、下馬評も大したことはなかったはずだ。そして大々的なプロモーションも行っていなかった。

映画の内容自体は、映像力、コンテンツ力も優れている。現在の男の子と3年前の女の子の時空が彗星の到来を原因として一致し、ときに体が入れ替わり、問題解決後、時間軸が完全に一致するというタイムパラレルストーリーであり、そのときにはお互いの名前や記憶もなくし、ただ、なんとなくお互いの記憶の片隅に残って、赤の他人同士のはずなのに、ふと惹かれあって、街の階段で二人が再開したときに、本当に良かったね、と視聴者が心からその再開を喜べた。しかしコンテンツが優れているからヒットするとは限らない。

ヒットさせるには話題性を持つことが重要。今までの話題性とは、優れたクリエイターとメディア支配層が巨大な資本力を用いて、作為的に作り出し、受け手は単に踊らされていただけだが、『君の名は。』は、その話題性も受け手そのものが大いに盛り上げたことに特徴がある。映画公開前と映画公開後の口コミ数が半端なかったと言われている。

ヒットの引き金になったのは人気グループRADWIMPSの参加だ。映画の主題歌である「前前前世」は、コード進行も秀逸で、歌詞も映画の世界観に完全にリンクしている秀作であるが、何よりもこの「前前前世」の二次創作の多さが素晴らしい。ただ単に歌ってみた動画、替え歌、MAD等You tubeに無数の二次創作が投稿されている。数百万回や一千万回を超えた動画が現れた。これら二次創作のコンテンツが、特にRADWIMPSのファン層に広がり、その後、その他の層にも広がることで公開前から巨大な口コミ数に達した。You tubeの二次創作動画で、小遣いも多く稼げる素人クリエイターも出てきたし(投げ銭文化!)、お金にはならなくても、視聴数の増加で、承認欲求が満たされた人が多く出てきた。これがSNSに必要な、創作・投稿、そして拡散の動機に他ならない。まさに自分の「いいね!」欲しさに、他人の宣伝までしてくれるのだ。

結局、RADWIMPSの楽曲が引き金になり、まず彼らのファン層に浸透して、口コミのビッグウエーブが二次、三次と訪れることになる。公開後に、「ストーリー展開の面白さ」「絵のきれいさ」「泣けた!」等、映画の内容に対する口コミが爆発的に増加した。

こうなると、評判の映画を見てみたいとする、RADWIMPSのファン以外の層にも口コミが広がり、口コミが口コミを呼ぶ状態になる。

「求心力」が、RADWIMPSの優れた楽曲、『君の名は。』の本来持つ「ストーリーの面白さ」「画力」であったとすれば、二次創作やその後の口コミが「遠心力」ということになる。ちなみに星野源さんと新垣結衣さんが主演された「逃げ恥」も、ドラマからというよりも「恋ダンス」が評判になり、そこからドラマを見るようになった人も多いと思われる。

求心力と遠心力のバランス、特に遠心力の活用が、これからのソーシャル時代に必要な発想と言える。そのツールはSNS(特にツイッター)に他ならないことは言うまでもない。

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